某社の都 NO.5
【この物語はフィクションです。】
改めて言うが、山形は雑務をこなすだけの子会社には勿体ない程仕事ができる男だ。
渡丸が入社する5年前からこの会社に勤めているが、それ以前はかなりの大手商社に勤務しており、そこでも優秀な社員として名が通っていた。
入社1年目から、画期的なアイディアを積極的に発案しチームリーダーとしても活躍した。
3年が過ぎた頃、海外に出張に出かけ、高級ワインに使われるブドウ畑を視察して回った。
その時、隣の土地で作られている、名の無いブドウ農園に目を付け、これだと閃く。
その農園のブドウを使い『格安だが味は本物』という謳い文句でワインの輸入事業を始めると、これが飛ぶように売れた!
それが噂となり、自社だけでなく、同業他社にまで山形の名は知れ渡ったのだ。
渡丸が聞いた話では、5年目に差し掛かった頃、これからはデパートなどの大型店舗ではなく、小型のチェーン店の時代が来ると先を読み、フランチャイズ事業を進めることを部長に提案したそうだ。
だが、これがいつになくあっさりと却下されてしまう。
そこで、前々から目をかけてくれていた社長に、思い切って進言してみることにした。
一社員が上司を飛び越えて、社長に企画を持ち込むなど本来はあり得ないが、優秀な山形だから許される行為だった。
だが、その社長にも「お前の言っていることは正しい。だが、今は無理だ。後10年待て。」と言われてしまう。
実は、まだ公になっていなかったが、丁度大型店舗を全国に展開する計画が水面下で進行しており、しかもその計画の発案者が会長だったそうだ。
山形はその正反対の企画を出したのだから通るはずもなかった。
このことを機に、会社に見切りをつけた山形は、あっさりと退職。
自分の考えを実現できる企業を探して転職活動を始める。
優秀な人材だけに、他社からの引き抜きも無かったわけではないが、大手では動きづらいと全て断り、中堅企業でフットワークの軽い企業を探したが時期も悪く転職活動は難航。
そんな折に、妻の妊娠が発覚する。
理想を振りかざしている場合じゃないと決意し、とにかく就職出来る所を探し始め、紆余曲折を経て今に至るという。
その話を聞いて、吉田は「へぇ~。山形さんて、やっぱすごい人だったんすね!!?」と、改めて関心した後「そんな人がなんでこんな会社に?」と続けて質問する。
渡丸はう~んと唸った後「詳しくは俺も聞いてないんだけど、会社を辞めてから結構時間が経ってて、割とそれが足を引っ張ったらしい。それに、経済バブルが崩壊して、超不景気になったろ?それも影響したみたいっぽい。」とふわっとした回答を寄越す。
そして、自分の机の方に向き直り、散らかった資料を眺めながら「”就職氷河期”だから、うちみたいな所しかなかったんじゃないのかな。」と予想する。
それを聞いた吉田は「しゅうしょくひょうがき?…なんすかそれ?」と首を傾げた。
そう言われて、渡丸自身の頭にも疑問符が浮かぶ。
そして、今一度吉田を見て「俺…そんなこと言った?」と驚いた。
————————————————-



























