某社の都 NO.8
【この物語はフィクションです。】
今日中には帰りたい。
だが約束をしてしまった。
しかし、一度帰ろうと思ったことで、気持ちのスイッチは既にOFFになっている。
だが、このまま放って帰るのも残酷だ。
でも、早く帰ってゆっくりしたい。
渡丸の頭の中で様々な言葉が行き交い、葛藤が葛藤を生み、頭の中でしばらく議論が続いたが、結局のところ結論は決まっていた。
このタイミングで先に帰るのは忍びない。
これが彼の心底にある答えだった。
それでも「じゃあそれは明日にしないか?明日手伝うから、今日の所はもう帰ろう!!」とあがいてみる。
しかし吉田は「それが~実はこの資料、明日先方に渡さないとダメなんす!」と申し訳なさそうな顔を見せてくる。
「まじか!?そんな急ぎの案件なのか!!?」と驚く渡丸。
「いや~、その~…」と言い淀む吉田。
「前から抱えてた仕事なんすけど…結構面倒そうだったんで、後で集中してやろうと思ってたら、他の仕事も予想よりも手間の掛かるのばっかりだったんで、必然的に遅くなったというか、なんというか…」
要するに、後回しにしていて、気付いたら納期ギリギリになっていたということだ。
しかも、先にやっていた作業は、どれもまだまだ日程に余裕のある物ばかりで、一番やらなければならなかったものが後回しになっていたうえ、フリーズして消えてしまったということだった。
説明を聞いて、渡丸の頭に血が上りかけたが、ここで自分が怒っても仕方ないと飲み込む。
そして、冷静になれと自分に言い聞かせてみたが、なかなかイライラが止まらない。
と、その時『グーーー』と音を立てて渡丸の腹が鳴った。
怒りのせいか、恥ずかしさのせいか、顔を赤くした渡丸は、さっと立ち上がると、机の下に置いてあった鞄を椅子の上に置き、中から財布を取り出す。
とにかく、今はこの場から離れたいと考え「ちょっとコンビニに行ってくる。」と吉田に告げて、渡丸は会社の外へと逃げるように出て行った。
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